セラミックにとって最もリスクが高いのは、歯ぎしり(ブラキシズム)と食いしばりです。
食事中の咀嚼では、食べ物が力を受け止めてくれます。ところが歯ぎしりや食いしばりでは、歯と歯が直接ぶつかります。そのときの力は、食事のときの数倍から数十倍に達することもある。これがセラミックに繰り返し加わると、表面に見えない微細なひびが少しずつ入り、ある日突然欠けるという形で表れます。

「セラミックって、割れることがあるんですよね?」
治療を終えた方から、こういった質問を受けることがあります。費用をかけて入れたのに壊れたらどうしよう、という不安は、当然のことだと思います。
ただ、少し整理してみると、この不安には答えがあります。セラミックがなぜ丈夫なのか、逆にどんな状況で壊れやすくなるのか、その仕組みを知っておくだけで、日常での向き合い方がかなり変わります。
「なんとなく丈夫そう」という感覚のまま使い続けるのと、「こういう力には弱いから気をつけよう」と理解したうえで使うのとでは、結果に差が出てきます。この記事では、そこを順を追って説明します。

セラミックが歯に使われるのは、見た目が良いからだけではありません。素材そのものが、口の中という特殊な環境に向いているからです。
物質の硬さを測る指標のひとつに「モース硬度」というものがあります。
鉱物の硬さを1〜10の数値で表したもので、ダイヤモンドが10、爪が約2.5です。天然歯のエナメル質(歯の表面を覆う、体の中で最も硬い組織)は約6〜7にあたります。歯科用セラミックの多くも、この水準に近い硬度を持っています。つまり、日常の食事で受ける力に対して、十分に対応できる素材ということです。
ただし、金属とはひとつ大きな違いがあります。金属は力を受けると少し変形しながら逃がしますが、セラミックはそれができません。
一定以上の衝撃が加わると、変形する前に割れます。陶器と同じ原理です。この性質を理解することが、耐久性の話の起点になります。「硬い」と「割れない」は、セラミックにおいては別の話なのです。
適切に管理されたセラミックは、10〜15年以上使えるケースが多くあります。ただ、この数字はあくまで「使われ方が適切だった場合」が前提です。
同じ素材を入れても、10年で問題ない方もいれば、数年で欠けてしまう方もいる。その差は、素材の優劣ではなく、使われ方の違いによるものがほとんどです。
壊れるときには、必ず理由があります。「突然欠けた」と感じる場合でも、実際には小さなストレスが積み重なった末の結果であることがほとんどです。
セラミックにとって最もリスクが高いのは、歯ぎしり(ブラキシズム)と食いしばりです。
食事中の咀嚼では、食べ物が力を受け止めてくれます。ところが歯ぎしりや食いしばりでは、歯と歯が直接ぶつかります。そのときの力は、食事のときの数倍から数十倍に達することもある。これがセラミックに繰り返し加わると、表面に見えない微細なひびが少しずつ入り、ある日突然欠けるという形で表れます。
やっかいなのは、就寝中の歯ぎしりは本人が気づきにくい点です。朝起きると顎が重い、頭が痛い、歯科医師に「歯が削れていますね」と指摘されたことがある、こうした経験がある方は要注意です。
歯ぎしり自体を完全になくすのは難しいですが、ナイトガード(就寝時に装着するマウスピース)を使うことで、セラミックへの直接的な衝撃をかなり減らせます。セラミックを装着したあとにナイトガードを勧めるのは、このためです。
セラミックは丈夫な素材ですが、その下の歯がどんな状態かによって、寿命は大きく変わります。
注意が必要なのが、セラミックと歯の境目から始まる虫歯、いわゆる二次う蝕(にじうしょく)です。境目の清掃が不十分だと、そこに細菌が入り込み、セラミックの下の歯が少しずつ溶けていきます。外側からは見えないため、気づいたときには土台がかなり失われていた、ということもあります。
しかしながら保険の銀歯とセラミックでは、歯への固定のしかたが違うので、セラミックは二次う蝕になりにくいです。
セラミックが二次う蝕に強いのは、歯へのくっつけ方に理由があります。
保険の銀歯は、かぶせたあとにセメントで留める「合着」が中心です。この固定用のセメントは唾液に少しずつ溶け出していくため、年月とともに境目へわずかな隙間が生じやすく、そこが細菌の入り口になります。
一方でセラミックは、専用の樹脂(レジンセメント)を使い、歯と一体になるように「接着」させます。
境目がぴたりと閉じられることで、細菌が入り込む余地そのものが小さくなります。表面がなめらかで汚れが付きにくい点も、境目を清潔に保ちやすい理由のひとつです。
とはいえ、接着の精度が高いからといって、毎日のケアを省いてよいわけではありません。手入れが追いつかなければ、境目から虫歯は進んでいきます。
セラミックを守ることと、セラミックの下の歯を守ること、この両方が同時に必要です。
口の中のすべての歯は、互いにバランスをとりながら力を分散させています。このバランスがどこかでずれると、ひとつの歯に過剰な力が集まることがあります。それがセラミックの歯であれば、破損のリスクが上がります。
「最近、噛んだときの感じが以前と少し違う」という感覚は、見逃さないほうがよいです。自分では気づきにくい変化ですが、このような些細な変化を繰り返す場合は明らかに異変があります。一度安心を確認するためにも受診することをおすすめします。